エッセイ教室 課題:鉛筆

エッセイ
エッセイ教室 課題:鉛筆
「 まだ書けるから 」

小学校入学時に買ってもらった筆箱。中には真新しく先のとがった鉛筆6本がミサイルのように並んでいる。わたしは、その中の1本だけを使い続けた。

月日はながれ、4年生になった。

その1本はまだ存在していた。3センチほどの長さだろう。それでも尚、わたしは使い続けていた。使えるのに捨てるという選択肢がなかったからだ。

ある日の授業中、その鉛筆を、ななめ後ろの原くんが見つけ、わたしから取りあげると宙に向かって突きあげた。「 こいつ、こんな鉛筆つかってるぞ! 」

なになにと言いながら、みんなが群がってきた。まるで新種の昆虫でもみるかのように、わたしの鉛筆をながめた。

「 ほらほら、いいから 」先生がみんなをなだめその場を収めた。

そして翌日。

木村くんがわたしの席にきて、鉛筆を見せてくれと言った。机におくと、木村くんは自分の鉛筆を並べた。わたしの鉛筆の方が短かった。木村くんは「負けた」と言って席に戻った。鉛筆の背比べ。短い方が勝ちらしい。

さらに翌日、こんどは原くんが鉛筆を持ってきた。わたしの鉛筆よりも短いそれは、一目で新品を短くカットして削ったものだと分かる。そして、原くんは勝ちほこった顔をして席にもどった。

なにがなんだかよく分からないが、短い鉛筆選手権が始まってしまった。40人ほどいるクラスの子の内の10人くらいが、鉛筆短い自慢をはじめたのだ。

そして、何故かわたしに審判の役目が押し付けられた。

「 誰のが一番短い? 」

聞くまでもないだろう。並べてみれば一目瞭然じゃないか。

最終的には木村くんのそれが一番短かったと記憶している。

「 でも、わざと削って短くするなら誰でもできるよね? ずっと使って短くなったものとそれを比べるのは違うと思う 」小学4年生の正論を放ってやった。

誰一人として反論せず、皆は席に戻っていった。

短い鉛筆選手権は3日で消滅した。

その鉛筆は5年生になった時に、もう握れない長さになり、その役目を終えた。

エージロー

身近にあるものを使ってのエッセイ。
誰もが使ったであろう鉛筆から出題。
鉛筆から思い出せることがない人は他の筆記用具、他の文房具でも構いません。
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