コピーライティングは人の欲を刺激するように書いて、書き手の思ったとおりに行動をしてもらう文章術です。
この記事では、その ‟欲“ って何があるの? についてお話していきます。
基本的に8つあります。
その8つは大きく3つに分類できます。
1 生存に関する欲
2 生活に関する欲
3 社会に関する欲
先ずは生存に関する欲からいってみましょう。
生存に関する欲は3つです。
1 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい。
2 食べ物、飲み物を味わいたい。
3 性的に交わりたい。
では、順番に。
その1 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい。
とっても当たり前のことですが、人は生きたい!
そして、生きるなら、人生を楽しみたい!
さらに、長生きしたい!
という欲求があります。
心身ともに健康な人なら、誰しもその欲を持っています。( あまり意識はしていないと思いますが )
思春期のころ、身近にこんなヤツいませんでしたか?
ちょっとでも嫌なことがあると、「 あー、もう終わったわ。死にてー 」とかいうヤツ。
「 死にたい 」と言いつつも、しっかりと生きています。
はい。中学生のころのわたしです……
メンタル弱すぎ少年ですね。
でも、これはまだチョロいもんです。
心を病んでしまうと話は違います。
一時期、社会現象にもなったリストカット( 自傷行為 )も、手首などを切りつけますが、その人にとってはリセットであったり、見えない心の傷を目に見えるように視覚化したものだったりと、人によってさまざまです。
身体を傷つけてこそいますが、それは、死にむかうという行為ではなく、当事者にとっては、生きていくための手段だったりします。
なんだかんだで、人は生に執着しているのですね。
そうでなければ、とうの昔に人類は滅んでいたはずです。
人の根底にある「 生きたい 」という欲求。
その極みが不老不死です。
ギリシャ神話や北欧神話にも不老不死の説話が記されています。
また、中国では紀元前3世紀に、始皇帝が不老不死になるために、「 仙人を探し出して連れてこい 」だの、「 仙薬を持ってこい 」だのと、むちゃな命令をだしたと言われています。
このむちゃぶりに耐えかねた徐福( じょふく )という人が、「 そしたら、仙.薬を探しに出かけてくるよ 」といって、日本に亡命し、さまざまな技術を伝えたという伝説が日本各地にのこっています。
いまでは医療が、「 生き残りたい 」「 長生きしたい 」という欲求にこたえて発達しました。
年々、寿命がながくなっているので明白ですよね。
とにかく人は、‟ 生 ” に執着しています。
ということで、これをコピーライティングに活かすには、この欲求を刺激するように商品を紹介すればいいのです。
例えば、
自動車のエアバッグは事故から命を守ります。
健康食品も同じく「 毎日コップ1杯飲み続けるだけで、健康長持ち 」などとやっています。
あなたの命を守るために、エアバッグ付きの車に買い替えませんか? だったり、あなたの健康のために、特製のお茶を買いませんか? などなど、こんな感じで商品を売り込んでいますよね。
これらは「 長生きしたい 」という欲求に訴えています。
では、次をご紹介します。
その2 食べ物、飲み物を味わいたい。
栄養も水分も、命に直結しています。
ここでは、命ではなく、嗜好的な欲求を指しています。
では、嗜好的な欲求としての、食べ物と飲み物についてお話していきます。
特にテレビのCMなどでは、画面いっぱいに、肉汁がじゅわっとあふれた牛肉のパテ、しゃきしゃきレタス、チーズなどがサンドされた大写しのハンバーガーがドーンと映し出されるとか。
辺りいちめん雪、雪、雪。その山小屋の中で、ゆげが立ちのぼるくらいの熱々シチューを食べるとか。
俳優さんがゴクゴクとビールを飲み干して「 あーーーっ! 」とか、言ったりしています。こんなビールのCMをみたら、水分をたってわざと喉をカラッカラにしてギューっと飲み干したくなりますよね?
なにしろ、「 美味しいですよ 」アピールをします。
これは、渇きや空腹を満たすということとは別物の「 味わいたい 」を刺激しています。
健康食品でないかぎり、商品のもつ成分とか、効能などについてはふれません。
この商品は「 旨い 」をアピールして「 味わいたい 」という欲に訴えかけます。
例外として、カロリーオフなどを推すものもありますが、この場合は健康を意識している人がターゲットになります。
でも、健康に訴えながらも「 美味しいですよ 」を、しっかりとアピールしていますよね。
ただ健康にいい飲み物というだけではビールである必要がなくなってしまいますもん。
では、もう一つ。
その3 性的に交わりたい。
これも、人の「 生き残りたい 」という欲求とつながっていますね。( 命をつなげていくこと )
でも、ここで取り上げるのは、子孫を残すという本来の目的ではなく、快楽に訴えるパターンです。
客観的に周囲をみまわしてみてください。
繁華街にいけば風俗店はひしめき、客引きのおにーさんが声をかけてきます。
電車に乗ったら中吊り広告に週刊誌のスキャンダラスな見出しが載っていたり、さりげなく開いたホームページのはしっこに、性に関するサイトの広告があったりします。
テレビなんか観ても、夜もふけていくほど、刺激的なものが増えてきます。
なんだかんだで、性に関するものってそこいらじゅうにあります。
それだけ需要がある、ということですね。
セクシーな話なので、この場ではこれくらいで。
生活に関する欲は3つです。
1 恐怖、痛み、危険を免れたい。
2 快適に暮らしたい。
3 愛する人を気遣い、守りたい。
では、順番に。
その1 恐怖、痛み、危険を免れたい。
生存がなりたつからこそ、生活ができます。
生活するうえで、人が最優先にしているのが、この恐怖、痛み、危険を免れたいという欲求です。
やはり、この欲求があるからこそ、人類は繁栄できているといえます。
例えば、
痛みから逃れたいという欲求がなければ、180度の天ぷら油を頭からかぶってしまっても、「 べつに、なんともないし~~ 」とか言って……とんでもないことになってしまいます。
危険から逃れたいという欲求がなければ、猛スピードで車が突っ込んできても、よけずにはね飛ばされてしまいます。
恐怖を回避したいという欲求のない人は、腹ペコなアリゲーターがいても、気にせずアリゲーターのところに行きます。そして、ガブリとかまれてしまいます。
さらに、痛みから逃れたいという欲求がなければ、「 大丈夫かーー!? 」とかいわれても、「 痛いけど平気~ 」とか言って、そのままパクリと食べられてしまいます。
どれも命にかかわってきますよね。
この欲求がなければ、人類は滅亡しています……
だから、この欲求はかなり強いのです。
テレビCMなどのメジャーな広告ではみかけませんが、身の危険を回避するための商品・サービスを売るのなら、この恐怖から逃れたいという欲求を刺激するのが一番です。
例えば、防犯ブザーなんかも、大きな音が出て、犯人が驚いてにげますよ、近くの人がきてくれますよ。
というメリットだけを勧めるのではなく、
‟ 危険だから “
というこの部分を強調して恐怖から逃れたいという欲求を刺激すれば商品はもっと売れます。
痛みについても、捻挫などをしたときに貼るシップなど、「 楽になりますよ 」というよりは、「 痛みがとれますよ 」と書いた方が効き目はあります。
もちろん、商品にその効果がなければダメですが。
詐欺などでは、この恐怖心をあおるという手法をよく用いています。
いついつまでに、手数料を振り込まないと年金の支給が停止されますよ。とか、いついつまでに、利用料金を支払わなければアカウントが凍結されますよ。とか、
『 いついつまでに 』と期限をつけるのも、手法の一つです。
もちろん、この記事を読んでいる人は詐欺なんかしませんよね?
その2 快適に暮らしたい。
最低限の暮らしができているのなら、人が次に求めるのは、その生活をいかに快適にするのか? です。
自然豊かな田舎暮らしに憧れる人もいますが、やはり不便さを考えると実行に移す人はかなり少数派です。
でも、インターネットが利用できる場所ならば、山の中に住んだり、海辺で暮らしたりする人がいますね。
他人からしたら不便な場所だと思われるかもしれませんが、ネットさえつながれば仕事になるという人からすれば、快適な暮らしを得ているということですね。
空気は澄んでいるだろうし、魚なんかも新鮮だし、騒音なんて縁がないだろうし、ちょっと憧れちゃいますが、僕には無理そうです。
また、便利さを人がもとめたから、さまざまな技術の発展があります。
物はどんどん進化しています。
固定電話から携帯電話になり、若い人は知らないかもしれませんが、ポケベルなんていうものもありました。
携帯電話も最初はかなり重くて通信はアナログ式でした。
それがだんだんと軽量化されてデジタル式になり、そしてさらにはスマホの時代になりました。
まだまだ、進化していくでしょう。
これらも、便利な生活がしたいという欲求にこたえたものです。
このような生活を快適にする商品は、その便利さをとくに意識していきます。
この商品があれば、これだけ便利に暮らせますよー。
とアピールするわけです。
山奥の一軒家でも、電気、ガス、水道、ネット環境などが都会と変わらないくらい整っているのなら、その部分もしっかりとアピールすればいい。
ということになります。
その3 愛する人を気遣い、守りたい。
イギリスでは生命保険のことを「 ラストラブレター 」と呼びます。
死してもなお、愛する人を守りたい( 経済的に )。
そういう気持ちの表れですよね。
とてもロマンチックです。
この愛する人を守りたいという欲求は、危険を回避したいという欲求とセットにできます。
前の記事の『 生存に関する欲 』のところで、自動車のエアバッグを引き合いにだしましたが、このエアバッグは自分の命を守ることと、同乗者の命も守ることができるのですが、( 正しくはシートベルトとの併用をすることで )最初は運転席にしか装備されていませんでした。
それが、助手席にも装備されるようになりました。
助手席に座っている人=愛する人 と、見たてた宣伝で「 大切な家族も事故から守る 」というコピーを書けば、愛する人を守りたいという欲求を刺激します。( もう随分まえのことなので記憶が定かではありませんが、このようなCMがあった記憶があります )
社会に関する欲は2つです。
1 他人に勝り、世の中に後れを取りたくない。
2 社会的に認められたい。
では、順番に。
1 他人に勝り、世の中に後れを取りたくない。
生きることができ、そこそこ快適な生活をおくっているなら、次にくるのがこちらの欲求です。
射幸心と言って、人には他人よりも幸せでありたいという欲求があります。
この欲求には射幸心をあおる言葉が有効です。
例えば、流行を意識させるような言葉です。
「 のり遅れるな! 」
「 時代の先をいけ! 」
「 まだ××使ってるの? 」
なかなかのあおり文句ですね。
流行に敏感な、わかい人に効き目があります。
ちょっと想像してみてください。
80歳の男性に「 時代の先をいけ! 」というキャッチコピーで、入れ歯のせんじょう剤をすすめるのはいかがなものでしょう?
響きませんよね?
このように、あおる言葉は、歳をとるごとに効き目がうすくなっていきます。
言葉もそうですが、この欲求は年齢を重ねていくことで低下する傾向にあります。
健康などの欲求を先にみたす必要があるからです。
でも、こんなことがありました。
うん十年前に高齢者の間でゲートボールが流行りました。
そこには人に勝ちたいという欲求があったりします。
実家ちかくの空き地で、高齢のかたたちが毎日ゲートボールをしていて、たまにむきになってケンカをしていました。
ことと次第によっては年齢も関係なくなるんですね。
このような部分を上手くつけば、年齢が高くてもアピールできるものはあります。
では、後れをとりたくない。という欲について書きます。
国民性をあらわす例えに、こんなものがあります。
ご存じでしょうか?
―― 沈没しそうな船から乗客を海に飛びこませたいとき、
・イタリア人には「 飛び込むな 」
・イギリス人には「 紳士なら飛び込んでください 」
・ドイツ人には「 船長が命令しているぞ。飛び込め 」
・アメリカ人には「 保険には入っている。だいじょうぶだ飛びこめ 」
・日本人には「 みんな飛び込んでいるぞ。おくれないように飛びこめ 」
・阪神ファンには「 阪神が優勝したぞ! ここは道頓堀だ。飛び込め 」
かるいブラックユーモアですね。
こうしてみると、この欲求を刺激することは日本人にはとくに効果があるようです。
では、次です。
2 社会的に認められたい
この願望も便利な生活を手にしたあとからおこるものです。
他人から認められることは、よほどのへそ曲がりでないかぎり嬉しいものですね。
認められた結果、なにをえるのかというと満足・幸福感です。
「 認められたい 」と聞くと個人的には奥ゆかしいイメージをもってしまいます。
「 ミスばかりで迷惑をかけているけれど、なんとか仕事仲間として認められたい 」とか、
「 部下たちから上司として尊敬されたい 」とか、
「 顔にコンプレックスがあるので、整形したい 」とか、秘めた願望ですよね。
でも、欲を強く感じるものもあります。
「 パリッとしたスーツで決めて、社会の一員だと思われたい 」とか、
「 高級車をなん台も乗りまわして、セレブの仲間入りしたい 」とか、
「 子供にいい服を着せて、高級志向なママ友たちの仲間にはいりたい 」とか、これらも社会的に認められたい欲求にはいります。
ギリギリで生活している人からしたら後まわしです。
この欲求は、ぜい沢品を購入することで満たされます。
なので、生きていくのに必要な生存、そして、生活の欲求が満たされたあとにきます。
先に挙げた奥ゆかしいものも、ぜい沢品と言っていいでしょう。
例えば、
仕事ができるようになりたい。
という欲求を満たすためには、自分のスキルを磨くという手がありますので、資格をとるためにスクールに通うとか。
部下から認められたいなら、リーダシップをとるためのセミナーを受講するとか、ダイエットするなら、ジムに通うとか。
この、「 認められたい 」は、生存、生活の欲求と比べるとぜい沢なものになりますね。
以上、8つの欲求でした。
ちょっとでも参考になったらうれしいです。
ではでは。
エージロー